きっぷを買うまで
春の陽気に誘われて、先日の休みに、名古屋に行って電車に乗ってきた(「電車に乗って名古屋に行ってきた」のではない点に一応ご留意ください、乗り鉄です…)ので、その話を書きます。
よく晴れたお出かけ日和だったので、名古屋鉄道(名鉄)の未乗区間を乗りに行くことにする。
名鉄は、東京でいう東急や西武のようなこまかい路線網を主に名古屋の近郊に拡げている私鉄で、
路線延長は全部合わせると約440km(東京→京都の直線距離と同じくらい)。
国内の大手私鉄の中でも、かなり多くの路線を持っているほうに入る(鉄道ファンではない人向けの説明もところどころ挟みます)
(路線図)。
そもそも僕はこれまであまり名古屋に行く機会もなくて、全線のうちまだ3割ほどしか乗れていない。
日帰りなので未乗区間全部に乗ることはできないけれど、多少は乗り進めておこうと思い計画を立てた
(※乗り鉄にとって、「乗ったことがない路線がある」という事実は、それだけで十分お出かけの動機になるものです)。
早朝に地元を出発してJRを乗り継いで、朝9時過ぎにJRと名鉄の乗換駅の尾張一宮駅に到着。
名古屋駅でも乗り換えできるけれど、駅の規模が大きくて色々と手間取りそうだし、コンパクトな一宮駅から名鉄に乗り込むことにした。
さっそく、名鉄一宮駅の窓口で今日使う「名鉄百貨店グルメきっぷ」を購入。
3,400円で、名鉄全線の1日乗車券と名鉄百貨店で使える食事券の2本立て+αのサービスがついてくるお得なきっぷである(どれくらい得したのかは最後に書きます)。
代金をクレジットカードで支払おうとしたら、名鉄グループが発行しているカード以外は使えないとのことで、現金で購入した。こういうこともあるので、旅先ではある程度の持ち合わせは必須。
笠松競馬場探訪
9時半に名鉄一宮駅をスタートして、まずは北西方向へ向かう名鉄尾西(びさい)線の玉ノ井駅まで(未乗区間)を往復。
列車は2両編成、時刻表では30分おきということで、閑散路線かと思っていたのだけれど、沿線は大きめのマンションも見られるなどまあまあ都市化していて、立ち客も出るくらいの混み具合だった。
わずかな距離なので30分ほどで一宮に戻ってこれた。
食事券はお昼に一宮の名鉄百貨店で使おうと思っているのだが、レストランが11時までは開かないとのこと。
時間潰しも兼ねて、北へ向かう名古屋本線に乗り換えて10分ほど、木曽川を渡った先の笠松駅まで行ってきた。
笠松駅のすぐ近くには笠松競馬場がある。駅のホームの下なんかにさりげなく馬の絵も描いてあった。
競馬場の周辺で、ちょっと珍しい風景が見られるということで前から気になっていたので、この機会に実際に見てきた。
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競走馬の厩舎(馬小屋)は大抵は競馬場に隣接して作られるものなのだけど、笠松の場合は競馬場から2キロほど離れたところにあって、
その間には写真のような「馬専用道」が整備されている。馬は曳かれながらこの道を通ってくるらしい。この日はレースがなくて馬は見られなかったけれど、
全国でも多分ここにしかない、レアな道路標識(?)の数々を写真に収めることができたので満足。桜もちょうど見頃で綺麗だった。
馬が暴れたり逃げ出したりしたときのリスクもあるし、以前から厩舎の移転が進められているそうなので、じきにこの景色は見られなくなるものと思われる。
競馬場の中にも入ってみた。レースがない日は入場無料。公営競技場の門をくぐるのは、たぶん生まれて初めてのことだった。
今のところギャンブルには興味がないし、大流行している競走馬擬人化ゲームもやっていないのだけれど、さて今後はどうなることやら。
昼ごはん
11時過ぎ、ふたたび一宮駅に戻る。駅直結の百貨店のエスカレーターを上がってレストランフロアへ。食事券の出番です。いろんなお店から選べるようになっているけれど、今回は…
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「うなぎ家 はせ川本店」の「ミニうなぎまぶしセット」をいただきました。 さすがに「注文を受けてから捌いて焼くスタイル」とまではいかなかったけれど、それでも、ある程度ちゃんとしたお店のちゃんとした鰻を食べるのはかなり久しぶりのことだった。 焼き加減は割としっかりしていて香ばしかった。ここを選んで良かったです。ごちそうさまでした。 30分ほどで食べて店を出たら店の外で3組くらいお客さんが待っていたので、開店時間ちょうどを狙って大正解だった。
フリーきっぷの特典として、地下の食品フロアのジューススタンドで無料でサイズアップしてもらえるようだったので行ってみたら、
誰もおらず空っぽのミキサーが並んでいるだけ。「営業しているのだろうか?」と思ったところに店員さんが出てきて、
こちらは「注文を受けてから果物を切り始める」スタイルだった。作ってもらったデコポンいちごグレープフルーツの「春色ミックスジュース」を片手に移動を再開。酸っぱくて美味しい。
尾西線・津島線・瀬戸線
一宮から南へ。尾西線の残りの区間に乗る。この区間の電車も2両で、名古屋の中心市街から20kmほどしか離れていないけれども、田畑と宅地が混在する田舎らしい風景が車窓に広がる。
地元のお年寄りと学生が程よく乗った車内で、穏やかな春の日差しを浴びながらうとうとしているうちに、津島駅に到着。ここで乗り換えて、尾西線の終点の弥富(やとみ)駅へ。一宮駅からは1時間ほどかかった。
この辺り一帯は、小学校の社会科でお馴染み(?)の「輪中」地区。
弥富駅と言えば、「日本一標高が低い駅(地下駅除く)」として、僕と同世代くらいの元・電車大好き少年であれば見覚えがあるのでは(日本一標高が高い長野の野辺山駅とセットで電車図鑑なんかに書いてある)と思うけれど、
どうやら最近の測量で、さらに低い駅があるという話になったようで(東京の江東区の亀戸水神駅らしい?)、「低い駅」記念看板の類は全部撤去(白塗り)されたようだった。
名鉄とJRの乗換駅なのだけれども、写真のとおり、JRの駅の隅のホームを名鉄が間借りするスタイルになっている。
13時過ぎに折り返す電車(須ヶ口行き)で、名古屋方面へ向かう。弥富から名古屋への移動はJRの方が早くて便利なので、弥富発車時点では車内はガラ空き。
津島駅から津島線(未乗区間)に入ると、名古屋へ向かうお客さんが増えて少しづつ車内が混み始める。須ヶ口で名古屋本線の準急に乗り換えて、
名鉄名古屋駅を通り、金山駅で下車。ここで一旦名鉄の改札を出て、JR中央線に乗り換える。
大曽根駅で中央線を降りて、名鉄瀬戸線(未乗)に乗り換える。
瀬戸線は、名鉄の他の路線網とは繋がっていない、いわゆる「飛び地」路線ということで、いったん他の会社の路線(JR)を介さないと乗りに行けない。
大曽根駅のJRと名鉄の乗り場は結構離れていた。長い連絡通路を歩いて名鉄の改札を通り、14時過ぎの電車に乗車。
そういえば、電車のドアが閉まるとき、「ドア『が』閉まります」という放送があると思うのだけれど、名鉄はじめ名古屋周辺の電車では「ドア『を』閉めます」と放送される。
これは何か理由があるのだろうか‥?(オチはない)。
30分ほどで終点の尾張瀬戸駅に到着。30分後の電車で名古屋方面へ折り返すことにして、駅の周りを散歩する。
瀬戸といえば、「瀬戸物」と言われる通り陶磁器の産地。あとは、将棋の藤井聡太六冠のふるさとでもある。駅ビルにも手作りの横断幕があった(写真)。
15時になると駅前のからくり時計が音楽を流し始めた。よく見るとベルが陶製になっていて、独特の音が出ていた。「茶碗たたき」で音楽を奏でていると言ってしまえばそれまでだけれど…。
15時半ごろ、テレビ塔の足元、名古屋市内の栄町駅に到着して瀬戸線全線乗車完了。16時半にJR名古屋駅を出る電車で地元に戻るつもりでいたので、まだ少し時間がある。
地下鉄代をケチるべく、栄から名駅(名古屋駅)まで歩いてみることにする。途中、地下鉄伏見駅の地下街を通ったけれど、
昭和の雰囲気が色濃く残っている空間だった。いつかここでお酒を飲んでみたい。30分ほどで名駅に到着。家路についた。
おみやげ
尾張瀬戸駅の周りには、瀬戸物を扱うお店がたくさんあって、店頭に商品を並べて「陶器市」をやっているところもあった。手頃な値段で買えるものはあるかな、と思い、
駅から徒歩5分ほどの「セラミックプラザ」内にある愛知県の陶業組合が運営している売店を覗き、
黒い広口のお猪口(660円)を購入した。ちょうどにごり酒を飲む用に黒っぽい酒器があればいいと思っていたところだった(グラスや蛇の目よりも見栄えが良いので)。
湯呑みとかお茶碗とか、品揃えは豊富で、見ているだけでも面白いし、大半は2000円以内の商品で、ここで普段使いの食器を買い揃えることもできそう。
一方、店の一番奥のレジの周りの鍵付きの棚の中には、なんかすごい柄とか彩色とかされている数万円の茶碗が並べられていた(陶磁器の目利きは全くできません)。
こういう景色を目の当たりにすると、日用品の延長線上に伝統工芸品があるように思われて、なかなか面白い。
どれくらいトクしたのか
皆さん気になるところだと思います(気にならない?)
グルメきっぷは3,400円。一方、今日乗った区間について、乗る都度ふつうの切符を購入していたら3,120円になるようなので、
よって、昼の「うなぎまぶし」は280円だった、という結論になる。これはお得。
早朝から夜までフルに乗り続けたら、余裕で昼の食費がタダになるところだっただろう。
ちなみに、食事券のつかないノーマルな1日乗車券は3,200円、2日券は4,000円で販売されており、
2日連続で名鉄に乗るのならこちらを使うのが良さそうなので、同業者(乗り鉄)の皆さんの参考になればと。
今日の移動の結果、名鉄の乗車率はようやく50%手前に。
これからも何回かに分けて乗りに行くつもりなので、
グルメきっぷにはまたお世話になるかもしれない(こんど食べるなら味噌カツかな…)。
2023.04.22