【雑稿】フルマラソン無謀な完走録①(準備編)

【雑稿】フルマラソン無謀な完走録①(準備編)

はじめに

 運動不足の肥満体ですが、このたび、ゼロから準備して3ヶ月少々でフルマラソン(富山マラソン2024・11月3日開催)に初挑戦し、6時間38分で完走(完歩)できました。振り返りとして、事前の準備・当日のこと・後日談の3回シリーズで書いていきたいと思います。

きっかけ

 3月に、いま住んでいる街でフルマラソンの大会が開催され、参加している叔父と職場の後輩を応援するために、走る人々を沿道から1時間くらい眺めていました。そのあと、もし「走る側」になってみたらどんなものなのだろうかと、漠然と興味を持ったのが、最初のきっかけです。あとは、前々から、何かしら運動習慣を持たなければ…と思っていたところでもありました(毎年、健康診断に引っかかり、お医者さんから叱られていた)。4月、故郷の富山で11月に開催されるフルマラソン大会の参加者募集が始まったので、とりあえずエントリーをしてみて(向こう見ず)、まあ半年あるし、準備して走れるところまで走ってみよう、ということにしました。

スペック

 25歳172cm84kg、BMI28(肥満1度)。高校卒業後、現在まで7年間は運動習慣なし。この間に20kg増量。中学高校では一応運動部(剣道)で、体育の時間に1,500mは5分10秒台、50m走は6秒台後半で走れていた気がする(もちろん、今では見る影もない)。大学時代に、ブクブク太るばかりでマズいと思い、何度かランニングをやろうとしたけれど、いつも半月もせずに腰や足首を痛めて諦めていました(今思うと、速いペースで走りすぎていたものと思われる)。

7月(準備開始)

 6月までは特段何もしませんでした。

 7月、職場から家(社宅)までの4キロほどを、週に2回くらい歩いて帰ってみることにしました。ゆくゆくはこの距離を退勤ランしようと画策していたのですが、まず歩けないことには走れる訳がありません。革靴の代わりに真っ黒な運動靴(アンダーアーマーのCharged Pursuit2という靴。5千円くらいだった)を準備して、職場に履いて行って、天気の良い日は汗をかきながら歩いて帰宅していました。7月末のピアノの発表会(趣味でピアノを弾いていて、子どもたちに混じって毎年演奏している)を終えるまでは、変なケガをしたくなかったので走りませんでした。

8月

 ピアノの発表会が終わったので、退勤ランを開始しました。SALOMONの20リットルの真っ黒なトレイルラン用のリュックを購入し(8千円くらい)、トレパン・トレシャツ・トレ靴下を詰めて出社。程よく暑さが落ち着く18時半〜19時くらいまで残業して、退社時にロッカールームで着替えて、仕事着を詰めたリュックを背負ってランニング。暑いので、水分のスポドリも常に携帯し、交差点の信号待ちでは水分補給しながら傍若無人にストレッチ。初回は3キロも走れませんでした。翌日リベンジしようとしたら、300メートルで足を攣ってリタイアでした。どうも、短距離走的な走り方をしてすぐにバテているようだったので、スマホにNIKEのランニングアプリを入れて、走るペースを管理できるようにしました。お盆休みまでには、ゆっくり(キロ7~8分とか)だけど、その代わりに5~6キロ走り切るペースを体得できました。

 お盆休み直前に、注文していたApple Watchが届き(ちょうど測量士補試験に合格して、職場から祝金を貰えたところだったので、ご褒美に買った)、ここにもナイキのアプリを入れて、手元でペースと心拍数を見られるようにしました。お盆に富山に帰省して、さっそくApple Watchとロングランに挑戦!と勢い込んで、よく晴れた早朝、実家から海まで往復11キロ、キロ8分半で走ってみました。

 人生で初めての「10キロ走り切る」という経験で、大きな達成感がありました。一方で、このランニングですっかり体力を使い果たしてバテてしまい、足の痛みもなかなか引かず、それから3日ほどは、ずっと扇風機の前に寝転んで本を読んでいました(ちょうど文庫化されて話題になっていたガルシア・マルケスの『百年の孤独』、素晴らしかった)。

 異変はそれから4日後の夜に起こった(ラテアメ文学チックな書き出し)。大阪へ遊びに行って、友人と京セラドームでナイターを観戦した帰り道、突如アキレス腱が石のように固まって思うように動かせなくなり、たちまちふくらはぎも同様の状態になって、あっという間に操り人形のようにフワフワした歩き方しかできなくなりました。足の至る所に湿布を貼りまくって養生しましたが、また走れそうな状態に戻るまで2週間かかりました。結果的に、海までの10キロランと引き換えに、8月の後半を全部棒に振ることになってしまったのでした。

 職場の後輩(フルマラソンサブ3)にこの話をしたら、「大腿筋とか腹筋とか、大きな筋肉を使って走れてないってことですね」と言われ、9月以降、たまにフォームの見直しを手伝ってくれるようになりました。8月はトータルで30kmほど走りました。

9月

 本番まで2ヶ月。また走れるようになったので走り始めました。週2~3回、3~4キロ程度をキロ6分半以内のペースで走りました。退勤ランは信号によく引っかかるのが少しストレスだったので、帰宅後、洗濯機が回っている1時間弱の間に、社宅の近くを流れる大きな川の土手の上を走ることが増えました。

 9月の中旬に母方の祖母が交通事故で亡くなり(夜の横断歩道で車に撥ねられた)、その葬儀とかでバタバタするなどしたのですが、ランニングは気分転換になりました。人生で初めて、走ることを楽しく感じられるようになっていました。9月はトータルで25kmほど走りました。足の故障はありませんでした。ちなみに、よく走りよく食べていたので、11月の本番に至るまで、体重は1kgたりとも減っていません笑(腕と脚の筋肉が増えた感覚はあります)。

10月

 月が変わると一気に涼しくなり、それに伴って自然にグンと走るペースが上がりました(気温の影響は本当に大きかった)。キロ6分半で10キロ完走することができるようになりました。よく晴れた日にバスで海沿いに行って、沈む夕日を眺めながらランニングをしたときは最高に気持ち良かったです。魂が洗われるような気さえしました。あと、趣味でマラソンを走ることで知られる村上春樹のエッセイ「走ることについて語るときに僕の語ること」を読んで、めちゃくちゃモチベが上がりました。走らない人が読んでも楽しめるけど、ある程度走る習慣がある人にとっては、結構な自己啓発効果が期待できる本だと思われます。

 そろそろ本格的なマラソン用のシューズを、ということで、アウトレットへ行ってasicsのGEL-KAYANO30というビギナー向けのシューズを買いました(1万7千円ほど)。クッション性能が高く、かかとの裏にマシュマロを敷いたかのような履き心地で、ちょっと驚きました。

 この靴を履いて、予行練習という位置付けで、10月14日に石川県は小松市で開催された「こまつ勧進帳マラソン」10キロ部門に参加してきました。人生初のロードレース。キロ6分50秒台を維持して1時間10分以内にゴールする目標でしたが、当日の暑さ(24度)と、まだ靴を履き慣れていなかったため靴擦れ(右足の薬指と小指の間)にやられて、結果は1時間10分39秒。僕よりも全然速く走るお年寄りが山のようにいらっしゃって、若いのだからもっと頑張らなきゃな、という気持ちになりました。参加部門(40歳以下の部)ではほぼビリだったけれど、いま振り返ると、前もって「マラソン大会」の雰囲気を知ることができる非常に良い機会だったし、いくつかの課題を見つけて本番までに改善することにつながりました。靴擦れは5本指ソックス(「靴下屋」で2千円ほどで売ってたランニング用)を買って克服しました。腕も結構な筋肉痛になり、10キロでこれでは42キロだと腕がちぎれかねないので、フォームを見直して、腕を振りすぎないように心がけました。

 10月はトータル60キロ強走りました。ペースよりも心拍数(150台を維持)を意識して、長く安定して走り続けることを最優先にしました。最長で2時間で17キロ走ることができました。そして、怪我をして本番の日に出走できない、というのはなんとしても避けたかったので、本番1週間前からランニングをやめました。直前の週は軽いウォーキング程度にとどめて、体に栄養を蓄えるべく、白米をガツガツ食べるなどして、11月3日の本番の日を迎えました。

(つづく)